北極圏の温暖化に影響を与えると考えられている「ブラックカーボン(すす)」の6割が、ロシアの森林火災で発生していることを、東京大の近藤豊教授(大気環境科学)らが突き止めた。世界の森林面積の2割以上を占めるロシアでは、年間1万件近い森林火災が起きている。多くは火の不始末など人間活動が原因だという。千葉市で開かれている日本地球惑星科学連合大会で28日午後、発表する。【八田浩輔】
北極圏の気温は、過去20年で世界平均の2倍のペースで上昇しているという報告もあるが、すすの発生源を分析したのは初めて。
近藤教授らは米航空宇宙局(NASA)と共同で、北極圏と周辺の大気中のすすの分布を08年4月と7月に調査し、発生源を分析した。4月のすすの濃度は7月の6〜7倍で、4月の発生源の63%がロシアの森林火災だった。7月も34.7%を占めた。
一方、自動車の排ガスなど経済活動によるすすの排出量は、中国とインドで世界の約4割を占めるが、アジアからのすすは6.6%にとどまった。北極圏に到達する前に、雨とともに落下したと考えられるという。
すすの温室効果は二酸化炭素(CO2)の半分以下だが、氷河の表面に付着して氷を溶かす作用がある。近藤教授は「地球温暖化対策はCO2削減だけでなく、ブラックカーボン対策も重要。ロシアの森林管理を急ぐべきだ」と話す。
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